ついでだから第二章も

22:23

「美しい鉄道員」 おはなし:イジニョン さしえ:キヨンスン


第二章 テレビのニュース


「ヒョソン、テレビをつけてみて」
夕飯のしたくをしているおばあさんが言いました。
ジュンソンお兄さんは勉強部屋にいます。
ヒョソンはテレビをつけました。
ちょうど、ニュースの時間でした。
突然、画面にお父さんの写真が映りました。そしてアナウンサーが話し始めました。
「これからとてもお気の毒な事件をひとつお伝えいたします。
子供を救おうとした駅員さんが列車に轢かれ、両足を失うという事故が起こりました。
京釜線永登浦駅で列車運行チーム長として勤務する42歳のキムヘンギュンさんが、この事件の主人公です」
驚いたヒョソンは、おばあさんとジュンソンお兄さんに声をかけました。
「おばあちゃん!ジュンソンお兄ちゃん!テレビにパパが出てる!」
おばあさんとジュンソンお兄さんが矢のような速さで、テレビの前に走ってきました。アナウンサーは話を続けました。
「7月25日朝9時9分ごろ、ソウル・永登浦駅。ソウル発・釜山行きのセマウル号第11号が停車するため、ホームに進入していました。
その時キムさんは下りホーム中ほどの黄色い安全線の外側で遊んでいる子供を見つけました。
危険を感じたキムさんは線路に飛び降り、子供安全線の売り側へ押し込みました。
そして反対側の上り線の線路に避難しようとした、まさにその時、進入してきた列車に轢かれたのです。
キムさんはすぐさま新村の病院へ運ばれました。しかし左足首と右足の甲より先の部分を切断しなければならない重傷を負いました。
事故のあと意識を失って倒れたキムさんは、病院へ運ばれていく救急車の中で意識を取り戻し「子供は無事か?」と、尋ねたということです」


しくしくしく…
ニュースを聞いたおばあさんは、体を支えきれず居間の床にへたりこんでしまいました。
ヒョソンとジュンソンはわーんわーんと、声をあげて泣きました。
今朝は陽も差し、表情も明るく起きたお父さんだったのに、両足を失って病院に横たわっているだなんて…とうてい信じられないことでした。


その夜、ヒョソンは夢を見ました。
トッタッ、トッタッ
パシュッ、パシュッ
ちらりと夏の陽が差したときです。
ヒョソンはお父さんと一緒に、アパートの空き地でバドミントンをやっていました。
汗をだらだらとかきながら、白い羽でできたシャトルをラケットで一生懸命に打ち合っていました。
バドミントンは、今年、ヒョソンが小学二年生になってから習ったスポーツです。
ラケットで打つたびに、鳥のように空へ舞い上がる白いシャトルを眺めていると、ヒョソンの心もまるで鳥になったみたいです。
だからヒョソンは、お父さんと一緒にバドミントンをするのが大好きなのです。
パシューッ
ヒョソンがお父さんに向かって打ち上げたシャトルが、本当の白いハトに変わりました。
ところがその瞬間「バーン!」という銃声が鳴り響きました。
そうしてお父さんに向かって飛んでいた白いハトが、血を流しながらヒョソンの胸の中に落ちてきたのです。


あまりの驚きに目を覚ますと、壁の時計の針は夜中の1時をさしていました。
家の中はがらんとして、空き家みたいに静かです。
お母さんは、まだ家に帰ってきていませんでした。